松蔭大学は「やばい」のか|偏差値35.0・充足率32.7%を隠さず読む神奈川の小規模私大

松蔭大学を調べると「やばい」「定員割れ」といった言葉が並びます。偏差値は35.0(河合塾でBF)、収容定員充足率は32.7%で、大幅な定員割れは隠しようのない事実です。 その数字をごまかさず正面から扱ったうえで、神奈川県厚木市で続く知行合一の歴史と、経営文化から看護まで4学部を持つ学校の中身を、公式データで確かめていきます。
この記事の目次
まず「神奈川の松蔭大学」だけを見る、山口や神戸とは別の学校
松蔭という名前は各地にあり、検索すると混ざりやすいので最初に整理します。この記事で扱うのは、神奈川県厚木市森の里若宮9-1に本部を置く松蔭大学(英語表記Shoin University)です。兵庫県の神戸松蔭大学(旧・神戸松蔭女子学院大学)とは法人も歴史もまったく別の学校で、幕末の思想家である吉田松陰その人が開いた学校でもありません。「松陰」と「松蔭」の字も混同されがちですが、ここで見るのは厚木の私立大学一つだけです。
そのうえで数字を正直に言うと、松蔭大学の偏差値は河合塾の区分で全学部がBF(ボーダーフリー)で、便宜上35.0と表示されます。当サイトの判定でも最も厳しいS(ボーダーフリー)にあたります。ここを隠して持ち上げても意味がないので、まず定員割れの実態から順に見ていきます。
充足率32.7%という数字を、ごまかさずに受け止める
大学が実際にどれだけ選ばれているかは、偏差値より収容定員充足率のほうが正直に映します。これは定員に対して何人が在籍しているかの割合で、松蔭大学は32.7%。定員のおよそ3分の1しか埋まっていない、極めて厳しい定員割れです。100%前後で踏みとどまる大学が多いなか、この水準は楽観できる数字ではありません。
この状態が意味するのは、選抜が実質的に機能していないということです。出願すれば入れる可能性が高く、偏差値がBFと表示されるのもそのためです。進学先として選ぶなら、この事実は伏せずに理解しておくべきです。ただし「充足率が低い=学校の中身が無い」ではありません。定員に対して学生が少ないという構造の問題と、そこで何を学べるかは別の話です。次からは、その中身と、なぜこの数字になったのかを分けて見ていきます。
「知行合一」と松蔭女学校から続く、80年を超える歩み
松蔭大学の源流は、1941年に松浦昇平が創立した松蔭女学校です。戦後に松蔭中学校・高等学校となり、1949年に松蔭女子専門学院、1985年に松蔭女子短期大学が開学しました。四年制大学としての設置は2000年で、松蔭女子大学として経営文化学部からスタートし、2004年に共学化して現在の松蔭大学へ改称しています。学園としては80年を超え、大学単独でも20年以上の歴史があります。
教育理念に掲げるのは「知行合一」。知ることと行うことは一つだという陽明学の言葉で、教育者としての吉田松陰の生き方に学ぼうという思いから松蔭学園と名づけられた経緯があります。個性を尊重した少人数の人間教育と、師弟が共に学ぶ姿勢を特長として掲げてきた学校です。派手さはありませんが、この理念の一貫性は押さえておきたい背景です。
経営文化・コミュニケーション文化・観光メディア文化という文系3学部
松蔭大学は4学部からなります。まず文系の3学部を見ると、経営文化学部はビジネスマネジメント学科と経営法学科を置き、経営と法律を軸に地域や企業で働く人材を育てます。コミュニケーション文化学部は、異文化コミュニケーション学科・日本文化コミュニケーション学科・生活心理学科・子ども学科の4学科で構成され、語学や心理、子どもといった幅広いテーマを扱います。
観光メディア文化学部は、観光文化学科とメディア情報文化学科を持ちます。もとは2009年に観光文化学部として設置され、その後メディア情報の学科を加えて現在の名称になりました。観光やメディアという実学寄りの分野を単独の学部として持っているのは、総合大学の一部門ではなく専門の場として学べるという点で、小規模校ならではの特徴です。名称に共通する「文化」は、この大学が文系の学びを軸に据えてきたことの表れでもあります。
2015年に生まれた看護学部、定員80人の資格系という柱
4学部のうち性格が異なるのが看護学部です。2015年に設置された比較的新しい学部で、看護学科の定員は80人。卒業により看護師国家試験の受験資格につながる、資格系の学びを提供します。大学近郊の病院をはじめ、神奈川県内の総合病院や救急医療の病院、介護老人保健施設、訪問看護ステーションなど、多様な実習先で学ぶカリキュラムが組まれています。
看護学部の偏差値も河合塾区分ではBFで、共通テスト得点率はおよそ43%が目安とされます。難関ではありませんが、国家資格に直結する学びは、文系学部とは進路の見え方が変わります。少人数のため教員との距離が近く、質問しやすい環境だという在学生の声もあります。文系の3学部と資格系の看護学部では、入学後に得られるものも卒業後の道もまったく違うため、志望学部ごとに個別に見る必要があります。
厚木・森の里という立地、丹沢を望む研究学園都市のキャンパス
キャンパスは神奈川県厚木市にあります。中心となる厚木森の里キャンパスは、丹沢大山国定公園の山並みを背景にした研究学園都市「森の里」の中に位置し、1号館から7号館までの校舎に加えて、グラウンドやテニスコート、ゴルフ練習場などの屋外施設がそろう広い敷地です。加えて本厚木駅前には厚木ステーションキャンパスがあり、両者を大学のバスが結んでいます。
アクセスは、小田急線の本厚木駅または愛甲石田駅からバスを使う形が中心です。森の里キャンパスは駅からバスで10分から20分ほどかかり、都心から近いとは言えません。一方で、緑に囲まれた落ち着いた環境で学べるという見方もできます。立地は好みが分かれるところで、通学のしやすさを重視するなら、事前にバスの便を実際に確認しておくのが安心です。
なぜここまで定員割れなのか、看護新設と奨学金競争という背景
充足率32.7%という数字の背景も、憶測ではなく大学自身の説明から見ておきます。松蔭大学が公表した自己点検評価書では、定員を満たせない要因として、県内の公立大学における看護系学部の新設(納付金が安い)や、医療施設を持つ私立大学の奨学金制度の充実といった競争環境が挙げられています。近隣に条件のよい選択肢が増えるなかで、受験生に十分な魅力を提示しきれていないという趣旨の自己評価です。
これは全国の小規模私大が共通して直面している、18歳人口の減少と都市部・資格系への集中という構図の一例でもあります。松蔭大学の定員割れは、学校が突然おかしくなったというより、こうした構造変化のなかで規模の小さい大学が置かれている厳しさの表れだと読むほうが正確です。数字を軽く見る必要はありませんが、その背景まで含めて理解しておきたいところです。
少人数の学校をどう選ぶか、判断の落としどころ
ここまでを整理します。松蔭大学は偏差値35.0(全学部BF)、収容定員充足率32.7%で、大幅な定員割れは事実です。当サイトの判定でもS(ボーダーフリー)にあたり、選抜が難関という学校ではありません。この点は隠さず受け止めるべきです。
そのうえで中身を見れば、知行合一を掲げて80年以上続く学園で、経営文化・コミュニケーション文化・観光メディア文化の文系3学部と、2015年設置の看護学部を持ちます。少人数で教員との距離が近く、看護のように資格へ直結する学びもあります。大切なのは「やばい」というラベルや偏差値の一点だけで決めることではなく、自分が学びたい分野がこの学校にあるか、卒業後にどう活かせるかを、志望学部ごとに具体的に確かめることです。学費や入試方式は変更されることがあるため、最終的な判断は必ず大学公式サイトの最新情報で確認してください。
よくある質問
松蔭大学の充足率はどのくらいですか?
収容定員充足率は32.7%で、定員のおよそ3分の1しか埋まっていない大幅な定員割れです。極めて厳しい水準であることは事実として認識しておくべきで、偏差値も河合塾区分で全学部BF(便宜上35.0表示)です。
松蔭大学はFラン(ボーダーフリー)ですか?
偏差値は全学部がBF(ボーダーフリー)で、当サイトの判定でも最も厳しいS(ボーダーフリー)にあたります。選抜が難関という学校ではありません。一方で、少人数教育や2015年設置の看護学部など、学部ごとの中身は別途確認する価値があります。
松蔭大学にはどんな学部がありますか?
経営文化学部・コミュニケーション文化学部・観光メディア文化学部・看護学部の4学部です。文系3学部に加え、2015年に設置された看護学部(看護学科・定員80人)があり、看護師国家試験の受験資格につながる学びを提供しています。
松蔭大学はどこにありますか?神戸や山口の松蔭とは違いますか?
神奈川県厚木市森の里若宮9-1にある私立大学で、厚木森の里キャンパスと本厚木駅前の厚木ステーションキャンパスがあります。兵庫県の神戸松蔭大学とは別法人・別の学校で、吉田松陰が開いた学校でもありません。
なぜ松蔭大学は定員割れなのですか?
大学自身の自己点検評価書では、県内公立大学の看護系学部の新設(納付金が安い)や、医療施設を持つ私立大学の奨学金制度の充実といった競争環境を要因として挙げています。18歳人口の減少と都市部・資格系への集中という、小規模私大共通の構造も背景にあります。

相川 直樹